行動心理学

サンクコスト(埋没費用)効果とは?事例や対策方法を解説!

独立してビジネスをはじめると、会社員として働いているときよりも意思決定する機会は多くなります。それらすべてを正しく決断するというのは不可能ですし、間違いを繰り返しながら判断力は磨かれていくものです。

しかし、サンクコスト(埋没費用)効果について知っておかなければ、ビジネスを成功させることが難しくなるといっても過言ではないでしょう。

それほど大切な考え方であるサンクコスト(埋没費用)効果について、身近な事例を交えながら解説していきます。この記事を読み終わるころには、あなたの意思決定力があがっているはずです。

1.サンクコスト(埋没費用)効果とはどういう意味? 

サンクコスト効果とは、回収できない(埋没している)コストのことです。特徴的なのは、すでに資金・時間・労力などのコストを投下しているため「ここで辞めてしまってはもったいない」と感じてしまうという点です。

あなたも、いままでに下記のような状況を経験したことはないでしょうか?

  • 面白くない本を「せっかく買ったのだから」と最後まで読んでしまう
  • 何年も着ていない洋服を捨てられない
  • もう好きでもないのに、長年付き合っているため恋人と別れられない

このように、それまでにかけたコストに対する「もったいない」という心理が、「現在の意思決定に影響を及ぼす」効果のことをサンクコスト効果といいます。

2.コンコルド効果とも呼ばれる

サンクコスト効果は別名「コンコルド効果」とも呼ばれます。コンコルドというのは、音より早く飛べる飛行機(超音速旅客機)のことです。かつてイギリスとフランスの共同開発により誕生しました。

空の移動時間を2分の1に短縮するという夢のようなプロジェクトでしたが、開発の難航や受注のキャンセルなどが重なり「商業的な利益が期待できない」ということが完成前にはっきりとしていました。

しかしながら、それまでに莫大な開発費が投じられていたため開発は強行されたのです。結果的に「コンコルド効果」という名称だけを残して2003年に全機が運行停止となりました。

つまり、「コンコルド効果」は「サンクコスト効果」の事例としてもっとも大規模なものといえます。

3.なぜサンクコスト(埋没費用)効果は起こるのか?

それでは、サンクコスト効果が起こってしまう原因について解説していきます。

原因その1:一貫性の原理(最後までやり通したい)

一貫性の原理とは「人が一度自分が決めたことに対して、行動や態度を変えずに最後までやり通すはたらき」のことです。

なぜこういったはたらきが起きるかというと、途中で変えずに現状を維持するほうが脳にとっては楽だからです。脳はできるだけエネルギーを使わない選択が好きです。よって、余計なエネルギーを使って行動を変えるよりも、現状維持を選びます。

また、意見や態度がコロコロと変わってしまう人は「社会的に信用できない」と思われる可能性が高いことも影響しています。はじめに言ったことを途中で変更すると、信用が落ちるというプレッシャーもあり、最後までやり通すことになるのです。

このような、「途中でやめることができない」という一貫性の原理がサンクコスト効果の原因となっています。

原因その2:ザイオンス効果(接触回数が増えると好感を持つ)

ザイオンス効果とは、同じ人や物に接する機会が多いほど、好感を抱くようになる効果のことです。日本語では「単純接触効果」とも呼ばれています。

たとえばスーパーに行ったとします。そのとき、テレビCMで見たことのある商品と、そうでない商品があった場合にどちらを購入するでしょうか? おそらくテレビCMで見た商品のはずです。これは、CMを放送できる企業は社会的信用度が高いという面もありますが、ザイオンス効果によって親しみを感じていることも影響しています。

このように、人はザイオンス効果の影響をうけるため、開発に多くの時間をかけている製品などには情が移ってしまい、なかなか中止することができなくなる場合があります。

原因その3:現状維持バイアス(なかなか行動を変えられない)

一貫性の原理でも解説しましたが、基本的に脳は新しい行動というのを嫌います。それは、生命維持を優先するようになっているからです。

現代の日本はとても平和ですが、原始の時代はつねに死と隣り合わせでした。知らない場所に行ったり、いつもと違う行動をとったりすると、どんな危険が待ちうけているかわかりません。危険な動物に襲われたり、道を踏み外して崖から落ちたりすることもあったでしょう。

よって、脳は身の安全を確保するために現状維持を優勢するバイアス(偏り)がかかるようになっています。そのため、理論上は損するということがわかっていても、なかなか行動を変えることができないのです。

原因その4:認知的不協和(損を認めたくない)

人は、自分の中に矛盾する2つの認知を同時に抱えた場合に、不快な感情が沸き起こります。この状態のことを認知的不協和と言います。

たとえば、次の場面を想像してみてください。あなたは最近太ってきたことを気にして、ダイエットを決意しました。しばらくの間は甘いものは控えるはずでしたが、友人からおみあげで美味しそうなチーズケーキをプレゼントされてしまいました。

このとき、あなたの心の中では「食べたい!」という声と「食べちゃダメだ!」という2つの声が戦っているはずです。この矛盾した2つの気持ちが生まれている不愉快な状態が「認知的不協和」です。

不愉快な状態は耐えられないので、人は不協和を解消するために行動をおこします。この場合は「ケーキを食べる」か「ケーキは食べない」のどちらかになりますが、「食べない」を選ぶことは難しいでしょう。多くの人が「もったいないし、夕食を抜けば大丈夫だ」など都合の良い解釈をして、ケーキを食べてしまいます。

同じような心理によって、明らかに採算が取れないプロジェクトなのに「違うプロジェクトで補えるだろう」などと都合の良い解釈をしてしまうことが、サンクコストにつながります。

4.身近なサンクコスト(埋没費用)効果7つの実例

ここからは、身近にあふれているサンクコスト効果の実例をみていきましょう。

身近な実例その1:食べ放題で元をとりたい

「食べ放題」はサンクコスト効果の影響をうけやすいサービスです。それは、「支払ったぶんの元をとらなくては」という考えになりやすいからといえます。

たとえば家族で、2時間2,500円の焼肉食べ放題を利用したとします。普段ならば食事は「家族で楽しい時間をすごす時間」のはずです。しかし、食べ放題となると「2,500円よりもたくさん食べる」ことに囚われてしまいます。

このように、食べ放題サービスというのは、本来の目的よりもサンクコスト効果である「損をしたくない」という心理になりやすいのです。

身近な実例その2:つまらない映画を最後まで観てしまう

つまらない映画を最後まで観てしまうというのも、サンクコスト効果が影響しています。

上映している映画がすべて面白いわけではありませんので、つまらない映画にあたってしまうことは十分にありえます。そのときに、多くの人が我慢して最後まで観てしまいます。

しかし、映画を観るのは楽しむためであって、映画館ですごすことが目的ではないはずです。よって、つまらなければすぐに出てきてしまえば空いた時間を有効に使うことができます。

それにも関わらず、「お金が無駄になってしまう」「これから面白くなるかも」「ゆっくりできるからいいか」などと考えてしまうのはサンクコスト効果の影響を受けているからです。

身近な実例その3:ソーシャルゲームの課金を止められない

スマートフォンなどでプレイするソーシャルゲームでの課金も、サンクコスト効果の身近な実例です。

「理想的なアバターにしたい」「アイテムをコンプリートしたい」などの心理から、課金アイテムの購入が止まらなくなってしまいます。

「そろそろ使いすぎかな?」と気づいたときには、大金をつぎ込んでいるため「いまさら止められない」という状況になっているのです。

ソーシャルゲームの課金システムというのは、このようなサンクコスト効果を利用して利益をあげる仕組みになっています。

身近な実例その4:退職や転職に踏み切れない

「退職や転職をしたいが、会社を辞める決心ができない」というのもサンクコスト効果の影響を受けています。

いままで会社に注ぎ込んできた労力や時間というものは、どうやっても取り返すことはできません。また、仕事のどこかに辞めたくなる原因があるはずです。もちろん生活費などの問題もありますが、イヤイヤ続けるよりはすぐに辞めて、転職したほうがいいでしょう。

いままでつぎ込んだコストに囚われていつまでも残り続けるのは、さらにサンクコストを増やしているようなものです。あとあと振り返ったときに、「あのとき転職していればよかった」と後悔することになってしまいます。

身近な実例その5:スポーツジムや習いごとを惰性で続けてしまう

月額で料金を支払っている、スポーツジムや習いごとなどもサンクコスト効果が働いています。

ジムの場合だと、シューズやウエアなどが初期投資としてかかっています。そのため、ほとんど行っていないにも関わらず「時間ができたら行けばいい」と思って月謝を払い続けてしまうのです。

しかし、結局時間ができることはなく、通っていないのに月々払いつづけることになってしまいます。

身近な実例その6:本や服などの不用品を断捨離できない

サンクコスト効果によって、本や服などの不用品を断捨離できないということがおこります。

たとえば、「友達からもらった誕生日プレゼント」「もう読むことがない本」「1年以上着ていない洋服」などです。

なかでも思い入れのあるものは捨てにくいでしょう。しかし、実際には物に思い出が宿っているわけではありません。不要なものは捨ててしまったほうが、スペースの節約にもなり、気持ちもさっぱりします。

なるべく不要なものを持たない暮らしをする「ミニマリスト」と呼ばれるスタイルがあります。サンクコスト効果に陥らないためには、ミニマリストを参考にしてみるのもよいでしょう。

身近な実例その7:英語や資格取得の勉強にかけた時間がもったいない

英語や資格取得の勉強にもサンクコスト効果が影響しています。

たとえば、「英語習得のために2年ほど海外に語学留学をした」とします。しかし、帰国してから就職したいと思える会社はどこも英語力が求められていない会社でした。

このような場合、自分の気持ちよりも英語を活かせる仕事を探してしまうのではないでしょうか。これは、英語習得のために費やした時間とお金が、サンクコスト効果として影響を与えているからです。

5. 経営や投資でのサンクコスト(埋没費用)効果5つの実例

サンクコスト効果は、経営や投資の面でも大きな影響を与えています。どのようなものがあるか、実例を5つほどご紹介します。

経営や投資での実例1:損切りができない株式投資

投資した金額が回収できないために、いつまでも保有し続けてしまうというのもサンクコスト効果によるものです。

たとえば1株100万円で購入した株式があるとします。企業の業績悪化により、80万円まで価値が下落してしまいました。株式を購入した当初は、「今後に期待できる」として購入したはずです。したがって、業績が悪化したならば即座に売りにだして損切りするべきでしょう。

しかし、損を認めたくないため、売りに出せずにずるずると保有し続けるということが起こります。

経営や投資での実例2:利益を生まない不動産投資

不動産投資のサンクコスト効果は、購入したけれどもなかなか利益がでない物件で発生します。

不動投資をはじめたばかりのころは、低価格の物件を購入することが多いでしょう。そうなると、立地や築年数などの条件があまりよくない物件の可能性があります。

そういった物件をリフォームしたり、広告にお金をかけたりしても、なかなか入居者は集まりません。物件を持ち続けていても、損失を出し続けてしまうので早々に手放すべきです。

しかし、サンクコスト効果によって「改善する手立てがあるはずだ」などと考えてしまって、なかなか手放せなくなってしまうのです。

経営や投資での実例3:投資額が回収できない新規事業

新規事業をはじめるということは、ある程度の利益を見込んでいるはずです。よって、期待していたよりも利益が得られなければ、早急に撤退するべきでしょう。しかし、サンクコスト効果によって、正しい判断ができなくなってしまいます。

たとえば、1,000万円の投資をした新規事業があるとします。スタートしたときは調子がよくて、利益が出ていましたが、時代の流れに乗りきれずに撤退することになりました。

しかし、すでに1,000万円を投資しているため、その分だけでもなんとか回収しようという考えに陥ってしまいます。その結果、余計に人件費をかけるなどの追加投資をおこない、サンクコストを増やしてしまうのです。

経営や投資での実例4:ムダな公共事業費

サンクコスト効果がおおきな影響を与えるのが、公共事業です。公共事業の場合は、予算や労力が民間企業の事業よりも多くかかっているケースが多いため、サンクコスト効果もおおきくなりやすいのです。

たとえば、新しく国立競技場などの施設をつくるとします。プロジェクトが開始してから、場所や予算などさまざまな問題が出たとしても、よほどのことがなければ中止にはならないでしょう。

公共事業の予算のほとんどは国民の税金であり、予算や完成にかかる時間も膨大なものです。このようなサンクコストがあるため、建設が開始されてから中止することは、ほとんど不可能となっているのです。

経営や投資での実例5:参入障壁と撤退障壁

利益の出ない事業なのに、撤退できない原因になるサンクコスト効果として、参入障壁と撤退障壁があります。

参入障壁とは

たとえば特別な免許が必要だったり、大規模な設備投資が必要だったりなど、新規参入の障害となるコストのことです。参入障壁が高ければ、サンクコストは発生しにくいといえます。参入するのは大変ですが、参入したあとはライバルが少ないため、事業がうまくいきやすいからです。

一方、参入障壁が低いと多くの企業が参入できるためライバルが増えます。よって、競争が激化してしまうのです。その結果、事業がうまくいかない企業が多くなって、投資した金額や時間がサンクコストになりやすくなります。

撤退障壁とは

赤字がつづいている事業ではあるが、長年の付き合いから取引先の信頼があったり、お客さんが求めている商品だったりなどで、撤退の決断がしづらいという障壁のことです。この障壁に阻まれて悩んでいる間にも、どんどんと赤字が積み重なっていってしまいます。

このように、参入障壁は物理的な面で、撤退障壁は精神的な面でのサンクコスト効果を受けやすくなっています。よって、利益が出ていないにも関わらず撤退が遅れてしまうのです。

6.サンクコスト効果に惑わされない方法

サンクコスト効果に惑わされない方法は、過去にこだわらずにゼロベースで考えることです。

たとえば、決断するときには下記のよう考えてみましょう。

  • 利益が見込めない株式や事業に投資し続けるメリットはあるのか?
  • ソーシャルゲームの課金アイテムをコンプリートするためには、一体どれぐらいの金額がかかるのだろう?
  • 長年一緒にすごした恋人だけれども、今現在は恋愛感情がなくなっている。このまま交際をつづけてお互いに幸せだろうか?

このように、過去にこだわらずにゼロベースで考えてみることで、サンクコストに惑わされて、無駄な時間をすごしてしまうことを避けられます。

まとめ:サンクコストを意思決定に含めてはいけない

今回は、サンクコスト(埋没費用)効果について解説しました。サンクコストは回収不可能なコストです。「意思決定の際には、サンクコストを含めてはいけない」ということがお分りいただけたのではないでしょうか?

独立してビジネスをすると、意思決定の連続になります。サンクコスト効果にとらわれずに、ゼロベースで考えることを心がけて、成功に向かって突き進みましょう。

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執筆者
大輪 好文
大輪 好文
セールスコピーライター。DTPデザイナーとして約3年の会社員経験を経て2016年に独立。広告ページのデザインを手がけたことで、セールスコピーライティングと出会う。『この世でもっともお金を生むスキル』を習得すべく、サイト運営者である大山さんのプログラムに参加。セールスコピーライターとしてのマインドとスキルを学び、プロとしての活動を開始した。文章とデザインの融合による高い反応率の実現。そして、誰よりもお客様に寄り添う一流セールスコピーライターを目指し、力戦奮闘の日々を送っている。

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