ターゲット設定(またはターゲッティング)とは、販売する商品や発信する情報を届ける相手について、その年齢や性別などの属性で絞ることを指します。
あなたはセールスレターを書く際に、きちんとターゲットを設定していますか?
もし設定せずに「みんなに向けた文章」として書いてしまっているのであれば、そのセールスレターの反応率や成約率が満足できる結果になることはないでしょう。
この記事では、ターゲット設定の重要性と、ターゲットを絞る手順について解説していきます。
ターゲットを絞ることが必要な理由
それでは最初に、「なぜターゲットを絞ることが必要なのか?」を説明していきます。
価値観の多様化
まず大きな理由として、価値観の多様化が挙げられます。
物が不足していた過去の時代と違い、現代の日本では世の中に商品が溢れています。商品が増えたということは消費者にとっては選択肢が増えたということであり、選択肢が増えたので消費者は「みんなに合わせた商品」よりも「もっと自分に合った商品」を求めるようになってきています。
たとえば、西暦2000年前後まではテレビなどのマスメディアに出る人だけが有名人だったはずです。音楽業界でも数少ないメジャーアーティストの中からそれぞれが好きなアーティストを選んで応援していました。
しかし現代ではSNSなどの発信媒体を誰でも使えるようになったことで、メジャーではない沢山のアーティストが台頭し、リスナーとしても聴くことができる音楽の選択肢が大幅に増えています。メジャーアーティスト全盛の時代よりも、より個人の細かい好みに合ったものを聴けるようになっているのです。
このように、ニーズやウォンツが多様化し、一人一人好みが違うという時代です。日本でも人口の減少とテクノロジーの進化による製品の生産性向上が続いていく以上、この流れはまだまだ進行するといえるでしょう。
情報量、選択肢の増加
価値観の多様化に加え、消費者が受け取る情報量も圧倒的に増えています。主な要因としてはこちらもインターネットの普及が挙げられるでしょう。
ウェブ検索によって一瞬で求める情報を得ることができ、著名でない一般人でも情報発信が気軽にできてしまい、多くの人が毎日数十通もの広告メールを受け取っています。
すると価値観の多様化と同様に「みんなのための情報」の価値は下がってしまい無視される可能性が高まっているのです。こちらの発信する情報を読んでもらうためには、お客さんにとって、より「私だけのための情報」にする必要があります。
たとえば、私は埼玉県川口市に住んでいますが、遠方の県で大きな事故があったというニュースをテレビで観ても特に強く反応はしません。
しかし「埼玉県で大きな事故がありました」と聞けば「埼玉のどこ?」と反応してしまいます。「川口市で大きな事故がありました」と聞けば確実にテレビに食いつくように観るでしょう。
このように現代で、情報によりお客さんを強く反応させたいのであれば、ターゲットを狭めてそのターゲットだけに響くようなものにする必要があるのです。
ターゲットはどこまで絞ればいいのか?
ターゲットを絞るのが有効だとわかったとして、どこまで絞ればいいのでしょうか?
もちろん最終的にはテストしてみないとわからないことでもありますが、いくつかの判断基準をお伝えしていきます。
絞れば絞るほど高単価、高成約率
基本的には絞ったほうがターゲットにメッセージが刺さる度合いは深くなります。そのため、成約率は上がりやすく、高価格商品が売れやすくなります。
上述のように、埼玉県民に向けて書かれた文章よりも、川口市民に向けて書かれた文章の方が私には深く刺さるのです。しかし川口市民に向けて書かれた文章では川口市民以外の埼玉県民は反応しなくなります。
20代女性に向けて書かれた文章よりも、22歳の女性に向けて書かれた文章の方が、22歳の女性には深く刺さります。しかし、22歳の女性に向けて書かれた文章では22歳以外の女性の反応は落ちてしまうのです。
よって、安価な商品なのであれば狭めすぎても購入者が少なくなりすぎて売上が伸びないという可能性もあります。どこまで狭めるかは、あなたの商品の価格と潜在顧客数の多さによって判断しつつ、テストしていきしましょう。
ナンバーワンになれるところまで絞る
「ランチェスターの法則」はご存知でしょうか? 第一次世界大戦中にフレデリック・ランチェスターというイギリス人が戦争の戦略として発表したもので、現代ではビジネスの戦略にも応用できるということで広まっている法則です。
その中で、敵(ライバル他社)よりも自分の方が弱い時の戦い方「弱者戦略」として、次のように述べられています。
弱者戦略
軍事における弱者とは、兵員数が少ない方の軍のことである。
ビジネスにおける弱者とは、市場シェアが2位以下のことである。マーケティング戦略においては、一つの特殊な分野に特化することで、そこまで手を回す余裕のない大企業の隙(ニッチ市場)を突いてのし上がれる。一般化して述べれば、弱者のとるべき戦略は差別化戦略で、敵より性能のよい武器を持ち、狭い戦場で、一対一で戦い、接近戦を行い、力を一点に集中させることである。
要するに、自社の力がそのマーケットの中で弱ければ弱いほど何かに特化しましょうということです。さらに別の言い方をすれば、ナンバーワンになれるところまで絞り込んで特化して戦うということです。
たとえば、東京都内にある「日本で最も評判の良い歯科医院」と、福岡県内にある「福岡で最も評判の良い歯科医院」があったとしても、よほどこだわりのある人を除き、福岡のお客さんのほとんどは福岡の歯科医院に行くでしょう。
さらにその「福岡で最も評判の良い歯科医院」に対抗して福岡県内で歯科医院を始めたいのであれば、さらに場所を絞ったり、お客さんの属性で絞ったりということが考えられます。「子供専用歯科医院」などですね。
自分よりも強い競合がいないところ、自分がナンバーワンになれるところまでターゲットを絞ることを考えてみましょう。
ターゲット設定の手順
では実際にターゲットを設定していく際の、絞り込んでいく手順について解説していきます。
こちらではお客さんを「デモグラフィック変数」と「サイコグラフィック変数」という面から考えていきます。
デモグラフィック変数とは性別や年齢、住所や職業といった人口統計として計算できる属性の要素です。対するサイコグラフィック変数とは価値観やライフスタイルなど、心の中の趣向のことです。
デモグラフィック変数を仮定
デモグラフィック変数は以下の要素からなります。あなたの理想とするお客さんについての仮説として、いくつか定義してみるところから始めましょう。
- 性別
- 年齢
- 住んでいる地域
- 所得
- 職業
- 学歴
- 家族構成
あなたの商品に全く関係の無い属性については除外して構いません。たとえば、インターネット上での通信講座や教材を販売するのであれば、住んでいる地域はどこでも関係ありません。
また、既に商品を販売しているのであれば、今までで最もよく購入してくれた層の属性を当てはめるのが良いでしょう。
デモグラフィックの仮定を判断
仮定したデモグラフィックが、あなたの商品を販売するターゲットとして適切かどうかを判断します。判断基準としてはもちろん「利益が最大化するターゲットかどうか」です。
- あなたが売りたい商品の単価がそのターゲット層に合っているか
- そのターゲット層は十分な人口がいるか
- そのターゲット層にあなたが効果的に情報発信をして、セールスをすることができるのか
といった面から、ターゲット設定の仮説が最適かどうかを考えてみてください。
サイコグラフィック変数を定義
サイコグラフィック変数は以下のような要素があります。
- 価値観
- ライフスタイル
- 性格
- 好み
価値観の多様化により、現代で特に必要となってきた設定項目といえます。
設定済みのデモグラフィックに該当する人々がどのような価値観やライフスタイルを優先しているのかを突き止めましょう。調べる手段としては以下のようなものが考えられます。
- 商品の既存顧客へのインタビューやアンケート
- ターゲットに該当する友人、知人へのインタビュー
- ターゲットに該当する人をSNSで見つけて発言内容を追ってみる
- 質問掲示板で探る
- ターゲットが好きそうな雑誌を読む
価値観とライフスタイルについては特に細かく調べることをお勧めしますので、もう少し詳述します。
価値観
価値観とは基本的に、以下の5つの要素の優先順位と考えてください。
- 仕事
- お金
- 家族
- 人間関係
- 健康
たとえば「ターゲットは経営者」と一口に言っても様々です。
自分もバリバリ働いている中小企業の経営者であれば仕事やお金が上位に来るでしょう。しかしセミリタイアして実務をほとんどやっていない経営者となれば仕事やお金の優先順位は低いはずです。
前者に対して健康を訴求するようなコピーを書いたとしても、(もちろん本人も健康の大切さは知っているでしょうが)そこに気を使う余裕は無いことが想像されます。
ターゲット層が何を大切にしているかを特定し、コピーに活かしましょう。
ライフスタイル
ライフスタイルについては、以下の2要素で考えてみましょう。
- 都会的な暮らしが好きな人か、自然に囲まれた生活が好きな人か
- 仕事をバリバリやって活躍したい人か、仕事以外の趣味などプライベートを優先したい人か
たとえば、仕事よりプライベートを優先したい人にビジネススキル系の商品を売るとしても、「この教材でスキルを学ぶことによって会社で大活躍できてみんなから尊敬されます」といった言葉では響きづらいはずです。
「この教材でビジネスを学ぶことによって会社を辞めることができて、好きな時間に趣味に没頭することができます」の方がよく響くであろうことは想像できるのではないでしょうか。
あなたの狙うターゲット層の人々がどんなライフスタイルを望んでいるのかを、しっかりと把握しておきましょう。
ターゲットを狭めなくても売れる方法?
きちんとターゲットを狭めないとお客さんに刺さらないということでご説明してきましたが、狭めないでも売れる方法はあります。
ただし保証の申請が増えたり、クレームがつく可能性も高くなったりと、あまりよろしくない方法なのでお勧めはしません。倫理的な問題もさることながら、お客さんに満足してもらえないということはリピート購入も紹介も起きなくなってしまうのですから。
感情を煽り立てる
強引な売り込み、押し売りのようなものとお考えください。また、世の中の怪しいセミナーに行くと、大声を出させて参加者の気分を高揚させたり、感情のこもったスピーチで感動させたりしてから高額バックエンドの販売に入るというものを見かけることがあります。
人は感情的になると理性が働きづらくなってしまい、衝動買いなどの大胆な行動をしてしまうのです。
また、SNSで高級車や豪邸を見せびらかしたり、豪華な食事や旅行を自慢したりしている情報起業家やキラキラ起業女子の皆さんも同様です。ターゲットを絞り、その悩みをピンポイントで解消するという考えを持っていないために、無理にお客さんの物欲を煽らなければ売れないのでしょう。
嘘をつく
「3クリックで100万円!」のような広告を見たことがある方も多いのではないでしょうか。もしもその情報が本当だと信じさせることができたとしたら、誰だって買うはずです。
「このメールをコピペして送るだけで、好きな女性を100%惚れさせる方法」という商品が売られていたとして、それを信じさせられるのであれば、ターゲットを絞らずともほとんどの男性が買うでしょう。
そこまで酷いものではなかったとしても、商品によって得られる効果について嘘をついて誇大表現をすることで、ターゲットを狭めることなく販売することは一応可能です。
もちろん、様々なトラブルが考えられますので全くお勧めはしません。
まとめ
ターゲットを絞る重要性とその手順について、おわかりいただけたでしょうか?
今後も日本の人口はどんどん減っていきますし、価値観の多様化と情報量の増加は止まらないことが予測されます。よって、ターゲットをしっかり絞って、そのターゲットがピンポイントで反応する文章を書くという考えはもっと大切になってくるでしょう。
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