ビジョナリー・カンパニーとは? 5分で要約を紹介!

ビジョン(将来展望)を持っている会社のことを『ビジョナリー・カンパニー』と呼びます。しかしビジョンを持っているだけでなく、「ライバル企業よりも優れている」「時代を超えて永続している」などの評価を得ることも多いでしょう。

この記事では『ビジョナリー・カンパニー』が広く知られるきっかけとなった書籍について内容を要約し、まとめています。原典をあたるのは時間がかかるので、短時間で概略をつかみたいあなたにおすすめの内容です。

ビジョナリー・カンパニーとは

『ビジョナリー・カンパニー(Visionary Companies)』の呼び方は、1994年に出版された『ビジョナリー・カンパニー(著者:ジェームズ・C・コリンズ/ジェリー・I・ポラス)』によって広く知られるようになりました。

このビジョナリーとは『先見的』や『未来志向』であることを意味しています。また、後でもふれますが、カンパニー(企業・会社)であることが重要で、社長や経営陣についてではないことにも注意してください。

著者らがあげる『ビジョナリー・カンパニー』の定義は以下のようになります。

  • 業界で卓越した企業である。
  • 見識のある経営者や企業幹部の間で、広く尊敬されている。
  • わたしたちが暮らす社会に、消えることのない足跡を残している。
  • 最高経営責任者(CEO)が世代交代している。
  • 当初の主力商品(またはサービス)のライフサイクルを超えて繁栄している。
  • 1950年以前に設立されている(あるいは設立後50年以上たっている)

この定義を見てもらうと「成功した企業」とか「長く続いている企業」だけでは言いあらわせない企業であることがわかるでしょう。著者らは『ビジョナリー・カンパニー』のことを『きわめて特別なエリート企業』であると言っています。

また『ビジョナリー・カンパニー』だからといって常に業績が良いわけではありません。

しかし、『ビジョナリー・カンパニー』にはずばぬけた回復力があるため、これらの逆境から立ち直り、現在の地位を獲得しているのです。

それではこれらの『業界内での卓越』『広く尊敬をあつめる』『ずばぬけた回復力』などはどのようにして『ビジョナリー・カンパニー』にそなわったのでしょうか。著者らの研究結果を中心に、重要なポイントをお伝えしてゆきます。

なお、この本ではビジョナリー・カンパニーおよび比較対象企業として以下の36社をあげています。比較対象企業はダメな企業だというのではなく、『金メダル級』のビジョナリー・カンパニーに対して、『銀メダル級・銅メダル級』の優良企業という位置づけです。

ビジョナリー・カンパニー 比較対象企業
3M ノートン
アメリカン・エキスプレス ウェルズ・ファーゴ
ボーイング マクダネル・ダグラス
シティコープ チェース・マンハッタン
フォード ゼネラル・モーターズ(GM)
ゼネラル・エレクトリック(GE) ウエスチングハウス
ヒューレット・パッカード(HP) テキサス・インスツルメンツ
IBM バローズ
ジョンソン & ジョンソン ブリストル・マイヤーズ
マリオット ハワード・ジョンソン
メルク ファイザー
モトローラ ゼニス
ノードストローム メルビル
プロクター & ギャンブル(P&G) コルゲート
フィリップ・モリス R・J・レイノルズ
ソニー ケンウッド
ウォルマート エームズ
ウォルト・ディズニー コロンビア

※ここにあげられていない業界や企業であっても、ビジョナリー・カンパニーはあります。

ビジョナリー・カンパニーの選び方

著者らがビジョナリー・カンパニーについて調べる前は、「ビジョンのある企業はビジョンのある指導者(カリスマ的指導者)によってつくられる」と一般的に言われていました。しかし、3Mのカリスマ的指導者をあげることができなかったため、「本質は一般常識から外れたところにある」と気がつき調査をはじめました。

この調査は有力企業のCEO(最高経営責任者)へのアンケートが中心となっています。CEOならそれぞれの業界について、最も見識があり、適切な判断をくだせると考えたからです。

  • フォーチュン誌の製造業500社ランキング
  • フォーチュン誌のサービス業500社ランキング
  • インク誌の未公開企業500社ランキング
  • インク誌の上場企業100社ランキング

上にあげたランキングの企業のうち、業種にかたよりがないように700社を選んでいます。選んだ企業のCEOに「とくにビジョナリー」だと思う企業を5社まであげてもらいました。

このアンケート結果から名前のあがった回数の多い20社を選び、1950年以降に設立した企業を除いたリストが、上のビジョナリー・カンパニー18社になっています。

一方、ビジョナリー・カンパニーの比較対象企業18社は以下の条件で選ばれています。

  • 設立時期が同じである
  • 設立時の商品や市場が似ている
  • CEOへのアンケート調査で社名がほとんどあがっていない
  • 負け犬企業ではない(=銀メダル級・銅メダル級の企業)

 

神話と現実

一般の人々が成功した大企業について思いがちなこと(=神話)の多くは著者らの研究により崩されました。つまり、『ビジョナリー・カンパニー』の現実には神話と異なる部分が多く見られたのです。

著者らの研究によって崩された『ビジョナリー・カンパニー』の神話のいくつかを紹介します。

【神話】偉大なカリスマ的指導者が必要

【現実】カリスマ的指導者は不要

『ビジョナリー・カンパニー』にとって、ビジョンを持った偉大なカリスマ的指導者はまったく必要ありません。むしろ偉大な指導者は会社の長期展望にはマイナスになることがあります。企業の歴史の中で特に重要な人物は、偉大なカリスマ的指導者になることを意識的に避けていた人もいます。

このような人達は偉大な指導者になることよりも、長く続く組織の構築に尽力したのです。

短くても半世紀、長ければ一世紀を超える歴史があるため、カリスマ的指導者だけに頼っていてはその人物の引退・死去と共に会社が衰退してしまいます。それを防ぐための組織構築が『ビジョナリー・カンパニー』では行われています。

【神話】すばらしい会社のスタートには、すばらしいアイデアが必要

【現実】具体的なアイデアをまったく持たずに設立された企業もある

『ビジョナリー・カンパニー』には具体的なアイデアをまったく持たずに設立されたものがあり、設立初期で完全につまずいたものも少なくありません。

例えば、1937年に大学を卒業したばかりのビルとデーブの2人が始めた会社では、ハッキリとしたアイデアはなく、お金になりそうなことを手当たり次第にやっています。2人が持っていたのは「電子工学の分野で会社をはじめたい」という願望だけでした。

現在、この会社はヒューレット・パッカード社としてよく知られています。あなたも創業者2人(ビル・ヒューレット氏とデーブ・パッカード氏)の頭文字をとった『HP』のロゴを見たことがあるのではないでしょうか?

【神話】最も成功している企業は、ライバルとの競争に勝つことを第一に考えている

【現実】第一に考えているのは、自分自身に勝つこと

『ビジョナリー・カンパニー』は、自分自身に勝つことを第一に考えています。これらの企業がライバルとの競争に勝っているのは、「明日、今日よりうまくやるにはどうすれば良いか」を厳しく問い続けた結果、自然に成功が生まれてきたからなのです。

そのため、どれほど目標を達成しても、どれだけライバルを引き離しても、「もう十分だ」とは決して考えません。

動く仕組みをつくる

上に上げた『神話』のうち、カリスマとアイデアについての『神話』が崩れたため、著者らは今までの考え方を大きく変えました。

それが、『動く仕組みをつくる』という考え方です。

すばらしいアイデアや偉大なカリスマの力で会社を大きくすることは、何十年も続く会社の歴史から見た場合、一時のブームや流行のようなものです。これらがあるときだけは頼ったり方針を聞いたりできます。

しかしこれらがいなくなってしまった場合、残された社員は動き方がわかりません。

一方、すばらしいアイデアや偉大なカリスマの力が無くなってしまっても会社を大きくできるのであれば、それは永続して会社を動かせる『仕組みをつくる』ことになります。

著者らは『動く仕組みをつくる』タイプの創業者によって『ビジョナリー・カンパニー』がつくられていて、その会社そのものが究極の作品であると言っています。

では『動く仕組みをつくる』とは、どのようなことなのでしょうか。次の項目ではこの内容について細かく見てゆきます。

基本理念の文章化

ビジョナリー・カンパニーには、文章化された基本理念があります。この基本理念は会社として利益を上げる以外にどのような理想を持っているかを表したものです。

ソニーの例をあげると、以下の内容が基本理念となります。

  • 技術を進歩させ、応用し、革新を起こして、国民の生活に活かすことに真の喜びを感じる。
  • 日本の文化と地位を高める。
  • 開拓者である。他に追随せず、人のやらない仕事に取り組む。
  • 個人の能力と想像力を尊重し奨励する。

ソニーを設立した井深大(いぶかまさる)氏はこれらの基本理念を設立当時に文章化しています(井深大氏の文章はもっと長いです)。会社の利益が上がるはるか以前にこれを明言しているのは、驚くべきことだと思いませんか?

一方で、比較対象企業のケンウッドにはそのような理念や哲学が全くないことが紹介されています。

もちろん、基本理念があれば会社が大きくなるのではありません。この基本理念にそいながら、会社の利益も上げているのです。ビジョナリー・カンパニーの基本理念は、会社の価値観も利益も大切にしているため『現実的な理想主義』だといわれています。

ここで大事なことは、経営者や時代が変わっても『基本理念だけは変えない』ことなのです。わかりやすく言えば「いつでも会社全体がブレない(=いつでも動ける仕組み)」ことになります。

進歩をうながす

上の項目でビジョナリー・カンパニーは『基本理念だけは変えない』と言いましたが、基本理念以外については、大胆に変えることがあります。なぜなら、1つの成功パターンにこだわりすぎていると世の中の流れに取り残されてしまうからです。

この『基本理念を維持しながら、進歩・前進しつづける』意欲的な姿勢がビジョナリー・カンパニーの神髄であると言われています。

多くの会社の場合、創業者は『基本理念を維持しながら、進歩・前進しつづける』意欲を持っていますが、創業者から離れた立場になると意欲が減少して行きます。しかし、ビジョナリー・カンパニーでは『基本理念を維持しながら、進歩・前進しつづける』具体的なしくみを組織の中に作っています。

ひとつ例をあげると、ゼネラル・エレクトリック(GE:『発明王』トーマス・エジソンが創始者)は技術革新の必要性をとなえるだけでなく、1900年代初めに世界に先駆けて企業研究所を設立しています。

他に例がない事業であっても『進歩するために』踏み出すことで、世界の流れに乗ってきたのです。

では『基本理念を維持しながら、進歩・前進しつづける』具体的な方法はどのようなものがあるのでしょうか。ビジョナリー・カンパニーが行っている方法を次の項目で紹介します。

基本理念を維持しながら進歩する5つの方法

基本理念の維持

カルトのような文化

ビジョナリー・カンパニーほどの大企業であれば、「社員にとってすばらしい職場である」と思われがちです。しかし、実際はそうではありません。

すばらしい職場だと思える人は、ビジョナリー・カンパニーの『流儀』に合っている人だけなのです。

たとえば、ウォルト・ディズニーでは採用した従業員すべてに『ディズニー・トラディション』と呼ばれる研修を受けさせています。ディズニーランドで従業員は『キャスト』、入場者は『ゲスト』と呼ばれていることを聞いたことがありませんか。このようなウォルト・ディズニーならではの決まりを身にしみこませる研修です。

これらは『人々を幸せにする』『ディズニーの「魔法」のイメージを徹底的に守る』という基本理念を維持することに役立っています。

一方で『魔法の国』に合わないイメージを持ち出す社員は徹底的に排除されるしくみになっています。過去にはストライキを起こした従業員(ディズニーの決めた服装や身だしなみに抗議した)を解雇するくらい、強烈なしくみになっているのです。

このような徹底的に基本理念を守らせるしくみがビジョナリー・カンパニーにはあり、『カルト(新興宗教)のような文化』と言われています。

はえぬきの経営陣

ビジョナリー・カンパニーの多くは、最高経営責任者(CEO)などの経営陣を外部から引き入れずに、社内の人材を活用します。本の中であげられている18社のうち、社外の人材がCEOになった会社は2社しかありません。

そのために、社内の人材を育成し、昇進させ、経営者としての資質を持った人材を注意深く行っています。基本理念を維持するために、後継者の育成を柱の一つとしているのです。

プロクター & ギャンブル(日本ではP&Gの方が一般的かもしれません)では経営幹部を常に育成していて、だれの後継でもいつでも引き継げるように準備しています。そうすることで、基本理念を会社全体で維持することが簡単になるからです。

P&Gは創業100年の時点で、歴代のCEOが7人しかいません。不祥事や経営不振のたびに経営陣をコロコロ変えているのであれば、これは不可能ですね。

このことは「会社の変革を起こすときに経営者を社外から招く必要はない」ことも示しています。

進歩を促す

社運を賭けた大胆な目標

ビジョナリー・カンパニーの多くは、リスクが高い目標やプロジェクトに大胆に挑戦しています。ただし、基本理念を守りながら進めることのできる挑戦です。

ソニーの場合「日本製品に対する外国での評判を向上させる」という目標(野望とも言えそうです)を、海外事業をほとんどしていない時期に立てています。1950年代では「メード・イン・ジャパン」は「低品質・低価格」を意味していました。

そのために、『東京通信工業』の社名を外国人でも発音しやすい『ソニー』に改名しています。

また、この大胆な目標は社員にとってもわかりやすく、社員のエネルギーをそそぎ込みやすい内容になっていることが大切です。

大量に実験して、うまくいったものを残す

クレジットカードで有名なアメリカン・エキスプレスが、1850年の設立当時は荷物の運送業から始まっていることを知っていますか?

エキスプレス(Express:『急行』の意味)が社名に入っているのは、運送業のなごりですね。

運送業で現金を輸送しなくてすむように(事故や強盗にあう可能性があるので)考え出された社内のシステム(送金為替システム)がヒットしたため、金融サービスに進出して行きます。

さらに、国外へ旅行するときに現金移動がむずかしいことに気づいた社長の提案で、旅行小切手(トラベラーズチェック)ができています。さらにその旅行小切手に関するサービスを提供していることで、旅行サービス業にも『意図せず』進出していきました。

行きあたりばったりや偶然の臨機応変的な対応なのですが、アメリカン・エキスプレスの『英雄的な顧客サービスを追求する』基本理念にそったものになっています。

つまり、基本理念をはずさずに色々なことを試しているのです。

他のビジョナリー・カンパニーでも、行きあたりばったりの試行錯誤から現在のヒット商品が生まれています。

  • ジョンソン & ジョンソンの『バンドエイド』
  • ヒューレット・パッカードの『計測器コントローラー(現在のコンピュータ)』
  • 3Mの『ポストイット』

以上の商品などが、試行錯誤から生まれた例としてよくあげられます。

決して満足しない

一般的に「大企業に入れば安心」というイメージがあると思いますが、ビジョナリー・カンパニーではそのイメージを当てはめない方が良さそうです。

最初にもお伝えしましたが、ビジョナリー・カンパニーの競争相手は常に過去の自分自身になっています。その「明日どうすれば、今日よりうまくやれるのか」の考え方が経営陣だけでなく、すべての社員に求められるからです。

そのため、現状を不十分だと感じるようにするしくみが組み込まれています。

携帯電話や無線機器で有名なモトローラの場合、売上高に占める比率が高い成熟した製品から撤退して、その穴を新製品でうめるしかないようにする方針をとっています。

つまり、技術革新を進めなければ売上が減少して会社がつぶれてしまう方針を『わざと』とっているのです。

ビジョナリー・カンパニーがしている基本要素(現状に満足しない(自制)、将来のために革新する(努力))は驚くほど単純なことがわかります。ただ、これを何十年も続けていることにショックを感じる人もいるのではないでしょうか。

まとめ

ビジョナリー・カンパニーに関する今回の内容いかがでしたでしょうか。内容を簡単にまとめると以下のようになります。

基本1:基本理念を維持する

  • カルト(新興宗教)のような文化がある
  • 社内採用のはえぬき経営陣

基本2:進歩をうながす

  • 大胆な目標を立てる
  • 大量に実験して、うまくいったら残す
  • 満足せずに進み続ける

この内容はビジョナリー・カンパニーが今までしてきたことをまとめた研究結果なので、絶対的な真理ではありません。今はまだ見つかっていない要素がさらに増える可能性もあります。

ただし、卓越した企業をつくり出すのに役立つ『ツール』だと言えそうです。

あなたも、ビジョナリーで長続きする組織を目指して、今日から取り組みを始めてはいかがでしょうか。組織が小さくても大きくても、活用可能なツールになっています。

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ゼロイチ㍿ 代表┃一般社団法人日本セールスプロモーター協会 代表理事┃YouTube6.4万人┃ゼロ起業副業アカデミー運営┃法人2社経営┃中卒→累計20億┃