仕事でもプライベートでも、伝え方の大切さを感じる場面は多々あります。「もっとうまく伝えられていたら、聞き入れてもらえたんじゃないだろうか」と反省したこともあるでしょう。
そんな方のために書かれた本が、「伝え方が9割」です。この記事では、この本を気になっている方のために、要点をまとめて解説していきます。
貴重な時間とお金を無駄にしないためにも、本書を買うか買わないかの選択にお役立てください。
1.伝え方が9割とは?
「伝え方が9割」は2013年に発売されたコピーライターの佐々木圭一さんの著書です。初版から1年間で50万部を突破したベストセラーで、ビジネス書ランキング1位にも輝きました。
伝えることが苦手だった著者が、苦心の末に導き出した、伝え方の技術を一般向けにわかりやすく紹介してくれています。
書かれている内容は、大きくわけて2つです。
- 「ノー」を「イエス」に変える技術
- 「強いコトバ」を作る技術
日常のコミュニケーションを改善する2つの技術について、本記事では要点を絞ってご紹介していきます。
2.お願いを「イエス」に変える3ステップ
お願いの返事が「ノー」になるのか「イエス」になるのかは、伝え方で変わるというのが著者の主張です。「イエス」に変える伝え方にするための3ステップを、デートに誘うというシーンを例に紹介されています。
ステップ1:自分の頭の中をそのままコトバにしない
頭の中で、「あの娘とデートがしたい!」と思っていても、本人にそのまま、「僕とデートしてください」と言っても、断られる可能性が高いでしょう。よって、まずは自分の頭の中をそのままコトバにすることをストップします。
ステップ2:相手の頭の中を想像する
そして、相手の頭の中を想像して、「なんて言えば彼女はデートに行きたくなるんだろう?」と考 えてみましょう。
そのために、相手の好きな食べ物や、行きたい場所、興味や関心を持っていることをさりげなくリサーチします。
ステップ3:相手のメリットと一致するお願いをつくる
最後に、相手がデートに行くメリットを導きだして、メリットと一致するお願いをつくれば完成です。
たとえば、彼女の好きな食べ物が「ラーメン」だったとします。そして、「一人じゃなかなか食べに行けない」と悩んでいることもリサーチ済みです。
だとしたら、「今度一緒にラーメン食べに行かない? おいしいところ知ってるんだけど」と言ってみるとどうでしょうか? 「僕とデートしてください」と言うよりも「イエス」と言ってくれる確率があがるはずです。
このように、たった3ステップを加えるだけで、いままでだったら「ノー」と言われてしまっていたお願いを「イエス」に変えることができます。
3.メリットの伝え方7つの切り口
上述したように「相手のメリットと一致する形でお願いをつくる」ことで、「ノー」を「イエス」に変えられます。書籍ではこのメリットの伝え方として、7つの切り口が紹介されています。
その1:相手の好きなこと
シンプルに相手の好きなことを組み合わせる方法です。自分の要求を直接伝えるのではなく、相手の好きなことをもとにつくります。
たとえば、自分に興味がない人をデートに誘う場合には下記のように言い方を変えます。
「君とデートがしたい!」→「うまいラーメン食べに行かない?」
どちらもデートに行くという目的は同じですが、相手の好きなことをもとにお願いをつくったことで、相手がデートに行くメリットができました。
その2:嫌いなこと回避
好きなこととは反対に、「嫌いなことを避けたい」という気持ちにこたえる方法です。人間は得たい欲求より避けたい欲求の方が強いため、大きな効果が期待できます。
たとえば、空き地への無断駐車をやめさせたい場合は下記のようにします。
「無断駐車禁止」→「無断駐車された場合、罰金5万円を請求します」
罰金5万円取られる可能性があるなら、少し遠くても有料駐車場を探そうとなるでしょう。このように相手の嫌いなことからつくることで、「お願いを聞いた方が自分にとって得だ」と思ってもらえるのです。
その3:選択の自由
人は決断するより、選択する方が簡単です。「行くか行かないか」には慎重になりますが、「どちらが好きか」という質問には気軽に答えられます。
たとえば、デートに誘う場面では下記のように応用します。
「君とデートがしたい!」→「うまいラーメン店と、石窯で焼いたピザの店どっちがいい?」
デートに「イエス」と言うよりも、「ラーメンでしょ!」と選択する方が簡単です。したがって、選択肢をつくることで、お願いが受け入れられる可能性があがります。
その4:認められたい欲
「自分を認めて欲しい」という欲は人間が生まれながらに持っている強力な欲です。人間は自分を認めてくれる人に好感を持ちます。
たとえば、締め切りが早まって急な残業をお願いするときは下記のようにします。
「ごめん、残業お願い!」→「重要なクライアントの仕事だから、君にお願いしたいんだ。」
このように、面倒くさい頼みごとでも認められたい欲を満たすひと言があることで、やってみようと思ってもらえるのです。
その5:あなた限定
人は自分を特別だと思いたい気持ちがあるため、「あなた限定」に弱いです。この方法は特に、たくさんの人数にお願いしているときに効果を発揮します。
あなた限定をつかって、友達を誕生日会に誘うときの伝え方を考えてみましょう。
「誕生日会を開催するのでよかったらきてね」→「佐藤さんにだけは来て欲しいんだ」
たくさんの人を誘っているけど、「私は特別に来て欲しいと思ってくれている」と思ってもらうことで相手の心が満たされます。よって、お願いをきいてくれる確率があがるのです。
その6:チームワーク化
「赤信号みんなで渡ればこわくない」というコトバがあるように、人間はひとりではやらないことでも集団ならばやってしまうものです。この心理を応用したお願いのしかたがチームワーク化です。
たとえば、あまり向上心がない同僚を勉強会に参加させたいとします。
「勉強会に参加してみたら」→「今度の勉強会、いっしょに参加しない?」
このように伝えることで、面倒くさかったり興味がなかったりで、ひとりでは参加することがなかったことでも「行ってみようかな」と思ってもらえます。
その7:感謝
人は「ありがとう」と感謝を伝えられると、断りづらくなるという心理をついた方法です。これは本書に「最終手段にして最大の方法」と書かれています。どの手法もそうなのですが、特に悪用は厳禁です。
たとえば、社内の共用スペースをキレイに使って欲しいときのお願いに応用してみます。
「みんなが利用するのでキレイに使いましょう」→「いつもありがとうございます。おかげさま でピカピカです」
「キレイに使いましょう」と書いただけでは「多少汚してもいいかな」と思う人でも、感謝が入ることでお願いを拒否しにくくなります。
4.「強いコトバ」をつくる5つの技術
世の中には、なぜか感情を動かされる言葉があります。たとえば、「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」(ドラマ:「踊る大捜査線」)などです。このような、インパクトのある「強いコトバ」の作り方として5つのパターンが紹介されています。
その1:サプライズ法
サプサイズ法は、伝えたい言葉に驚きの表現をプラスする方法です。人は驚きを求めています。驚きを求めて旅行に行ったり、手品やサーカスを見たりします。よって、驚きのある表現には自然と目がいってしまうのです。
サプライズ法でもっとも簡単なのは「!」をつけるやり方です。たとえば、「愛してる」より 「愛してる!」の方が注目度は高くなります。
その他にも、以下のようなサプライズを表現する言葉があります。
- 「びっくり、~」
- 「そうだ、~」
- 「実は、~」 (「伝え方が9割」より)
サプライズ法の代表的な例はJR東海が使用している「そうだ、京都、行こう」です。「京都、行こう」という普通の言葉に、サプライズの表現が加わることで感動する言葉に変わっています。
その2:ギャップ法
ギャップ法は、伝えたい言葉と真逆の言葉を使って、強い言葉を作りだす方法です。たとえば、アメリカのオバマ大統領が就任演説のときに言った「これは私の勝利ではない、あなたの勝利だ」という言葉があります。
多くの聴衆を感動させた名言ですが、おそらく、「あなたの勝利だ」だけでは感動させることはできなかったでしょう。「これは私の勝利ではない」という前置きをつけたことで、言葉に強いエネルギーがうまれました。
その結果として、たくさんの人の気持ちを震わせることができたのでしょう。このように、ギャップ法は特に力強い言葉をつくりだせる方法です。
その3:赤裸々法
赤裸々法は、肌感覚を表現する方法です。平凡な言葉に肌感覚を加えることで、生命力あふれる言葉に変わります。
たとえば、「泣いていた」という言葉が、赤裸々法を使うこと「朝、目が覚めると、泣いていた」(小説:「世界の中心で、愛をさけぶ」)というドラマチックな表現に変わります。
ほかにも「目頭が熱くなる」や「手が震えるほど」など、自分の体に起きていることを実況中継するように伝えることで、強い共感を生み出す言葉をつくることができます。
その4:リピート法
シンプルに言葉を繰り返すことで、言葉を強める方法です。使い方も、ただ繰り返すだけなので簡単ですが、インパクトの強い言葉をつくることができます。
たとえば、下記の言葉がリピート法を使った言葉です。
- 「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」(アニメ:「エヴァンゲリオン」)
- 「さいた、さいた、チューリップの花が」(童謡:「チューリップの歌」)
- 「となりのトトロ、トトロ」(アニメ:「トトロ」)
このように、「繰り返す」というシンプルな方法ですが、一度聞いたら忘れられないような印象深い言葉をつくることができます。
その5:クライマックス法
クライマックス法は、よく学校の先生が使う手法です。たとえば「ここテストに出るからな」と言われて、あわててノートをとりだしたことはないでしょうか。
その他にも、クライマックスを演出する言葉として、本書では以下の方法が紹介されています。
- 「ここだけの話ですが、~」
- 「だれにも言わないでくださいね、~」
- 「3つのコツがあります、1つ目が~」 (「伝え方が9割」より)
クライマックス法には、集中力が切れかかっている相手のスイッチを、もう一度入れる効果があります。よって、使いどころには注意が必要です。
まとめ
書籍「伝え方が9割」の要点について解説しました。プロのコピーライターが言葉に向き合って導き出したテクニックだけあって、わかりやすくて役立つ内容になっています。
ただし、ページ数が限られた「書籍」ですので、テクニック面に偏っているとも言えます。伝え方のテクニックというのは、あくまで人間関係を円滑にするためのものです。テクニックに走りすぎて、自己中心的な人だと思われてしまったら本末転倒ですので注意しましょう。
また、伝え方の技術に関して学べる無料メルマガが下記より簡単に登録できます。ぜひ購読してみてください。
SNSアカウント