『ツァイガルニク効果』とは、「上手にできなかったことや途中の状態にしていることについて、より強い印象を持ち、記憶しやすくなる」という心理現象です。
ドイツの心理学者クルト・レヴィン氏の考えをロシアの心理学者ブルーマ・ツァイガルニク氏が実験で示したことにより知られるようになりました。この心理現象の名称はブルーマ・ツァイガルニク氏よりとられていますが、『Zeigarnik』の読み方でザイガニック効果やゼイガルニク効果とも呼ばれています。
この記事では、ツァイガルニク効果についてよく見られる事例を解説し、ビジネスへの応用例をお伝えします。
テレビ番組の例
テレビ番組を見ていて、下のような例を見たことがないでしょうか?
- 『番組の最後に重大発表が!!』とテロップが出ている。
- 画面の一部がボカシなどで隠された状態でCMに突入する。
- 内容が急展開した直後、「えー、ここで!」と言うときに次回へ続く。
これらはみんな、ツァイガルニク効果を利用したテレビ制作上の演出です。全てを見せない状態や次の展開が気になる時にわざと中断させることで、視聴者の意識をその番組にとどめることができるのです。もちろん、番組だけでなくCMの視聴率アップも狙っています。
ただ、スポーツ番組などで「このあと〇〇選手が登場!」と出ているのに、なかなかその選手が出てこない時もあります。あまりに多用しすぎると視聴者の脳が疲れてイライラしてしまうので、バランス良く使うことが大切ではないでしょうか。
芸術作品などの例
スペインのバルセロナに『未完成なのに世界遺産』という珍しい世界遺産があります。
実際には完成している所だけを抜き出して世界遺産にしているのですが、部分的な世界遺産登録は世界でも異例であったので、登録された2005年当時話題になりました。
この『未完の世界遺産』はサグラダ・ファミリアという教会です。たしかに芸術作品・建築物としてもすばらしいのですが、さらに『未完成であること』でツァイガルニク効果により、人の印象に強く刻まれています。
このほかにツァイガルニク効果が見られる例として『ミロのヴィーナス』像があげられます。両腕が欠けた状態で発見された、美しい女性像です。両腕が欠けていることで、その先がどうなっていたか補うように想像するため、見た人に強い印象を与えています。
また、若くして亡くなったアーティストの作品が記憶に残りやすいのも「この先のすばらしい作品ももっと見たかった」「このまま続いていたらどんなにすごい作品が出ていたのか」という、途中状態の気持ちが起こるからです。
恋愛の例
親と一緒に暮らしている女性に多いと思いますが、門限が決まっていると「2人の時間を楽しめない」と思っていませんか?
実はツァイガルニク効果を恋愛関係で考えた場合、門限があった方が2人の関係は長続きしやすいと言えます。なぜなら門限があるため、一緒にいたくてもその時間までには家に帰らないといけないからです。つまり完全に満たされない状態が続くため、お互いのことを強く意識しやすくなります。
それでは門限がない場合はどうすれば良いのでしょうか?
その場合でもデートを早めに切り上げたり、次回の予定を決めてからデートをお終いにしたりすると良い関係が続きます。「もっと一緒にいたかった」「次はこんなことをしたい」という、満足していない状態になるからです。
また、多くの人に知られている物語のヒロインが、この心理効果で意中の男性の心を鷲づかみにしている例があります。あなたも多分知っているお話だと思います。
それは『シンデレラ』です。
シンデレラのストーリーでは、王家主催の舞踏会の途中で抜け出し(魔法切れによる門限)、ガラスの靴を残して(この持ち主が分かればもう一度会えるという期待)去って行きます。シンデレラ自身が美しかったこともあるのですが、ツァイガルニク効果により王子の好印象がさらに増加しているのです。
シンデレラほどの壮大なツァイガルニク効果は仕掛けにくいと思いますが、『ちょっと不満足状態』を意識的につくり出して、恋愛関係に使ってみてください。
仕事や勉強に使う方法
「区切りの良いところまで進んだら休憩しよう」と考えて、仕事や勉強する人は結構いると思いますが実は心理状態と効率の関係から見ると、あまり効率よくありません。
むしろ決められた時間だけ集中して頑張ったら、途中でもわざと10分位の休憩を入れるべきです。
定期的に頭と身体を休ませるので疲れにくく、ツァイガルニク効果ですぐに集中状態に復帰できます。また、もう一つの効果で記憶力も上がります。人の集中が続く時間は30~60分くらいと言われていますので、あなたもこの時間内で集中できる時間を探してみましょう。私の場合『50分集中したら10分休憩』の1時間サイクルをくり返すと一番効率よくできます。
この心理効果を仕事や勉強に使う上で、ひとつ注意点があります。
『途中で中断』することで、別の作業に取りかかることも可能です。ただし、沢山のことを中断していると「あの続きはどうしよう」という強いストレスがかかりすぎて頭が疲れてしまいます。せめて2~3個程度にとどめて活用するのが良いでしょう。
つい頑張りすぎて勉強や仕事を長時間してしまうあなたは、ぜひ試してみてください。
ビジネスに応用する方法
ビジネスにツァイガルニク効果を応用する方法は長くなりますので、3つの小項目に分けて紹介します。
最初は参加しやすくする
デアゴスティーニ(DeAGOSTINI)という出版社を知っていますか?
ややマニアックな趣味や興味を持っている人を対象に、大きな模型のパーツを毎週少しずつ提供することや、集めたくなるDVDなどを毎週1つずつ冊子につける販売戦略をとっている出版社です。『週刊 〇〇をつくる』などのタイトルでコマーシャルをしているので、見かけたことがあるかもしれません。
創刊号は特別価格で激安になっている上に、冊子が全て収められる特製バインダーやスペシャルDVDなどがついてきます。その分野に詳しい人なら集めたくなる内容なのですが、1週間でそろえることはできません。
読者は一週目に全体像が分かった上で、常に中途半端な状態に置かれます。これがツァイガルニク効果になっていて、次の号の購入や定期購読の申し込みにつながって行くのです。
同じような販売戦略をとっている例として、ニュースや漫画のコンテンツビジネスがあげられます。最初の1話や数ページが無料で読め「続きが気になる人は有料版へ」と誘導します。
この例のように、最初は格安あるいは無料で参加できるようにしておいて、途中から価格を上げる方法が取れる場合は使ってみてはどうでしょうか。
続きが気になる
テレビ番組の例でもあげましたが、続きが気になる状態を意図的につくり出すことで見ている人の興味を引き続けることができます。
ブログやコンテンツサイトなど、文章中心のビジネスであれば応用がしやすいのではないでしょうか。
- ブログのタイトル:『あの日、熊さんと出会った意外な場所』『ここには絶対に来ないと思っていた〇〇さん・・・・・・』など、本文を読みたくなるようなタイトルをつける。
- 次回への期待:「時間が無くなってきたので、続きはまた今度」「もうひとつあったのですが、長くなったのでそれは次回にお伝えします」など、完全に終わりにしない。
- コンテンツの最後:「今回の記事に関する情報」や「もっと詳しく知りたいときは」など、コンテンツやブログを読んできた人が次に気になるであろう情報を最後にサラリとのせる。
少し脇にそれるかもしれませんが、小学生を中心に2015年頃ヒットしたゲームがあります。
『マインクラフト(Minecraft)』と言うゲームなのですが、広大な世界で木を切ったり家を作ったりと、基本的に何でもできるようになっています。『何でもできる』は裏を返せば、『いつまでも完成しない』と言うことです。
連続するシリーズものや定期的な発行をしている場合に、ぜひ使ってみてください。
注意点
上ではツァイガルニク効果を有効的に利用する例をあげました。ここではツァイガルニク効果がはたらいて不利になる例を『注意点』としてお伝えします。
- 1つにする:『申し込みボタン』などのCTA(コールトゥアクションと言います)は一つだけにする。複数あるとツァイガルニク効果で他が気になって、先に進みにくくなってしまうから。
- 終わらせない:区切りや終わりをつくってしまうと、印象や記憶に残りにくくなる。全体像の紹介や次回予告をすることで『気になる』状態をつくっておく。
まとめ
この記事では、中途半端だと続きが気になる『ツァイガルニク効果』の解説をしました。
『中途半端』や『次回への期待』について色々な例をあげましたが、「後半だけ頑張れば良い」とは考えないでください。おもしろいストーリーやコンテンツの次に『最後に気になる情報』があるからこそ、ツァイガルニク効果が活きるのです。
ツァイガルニク効果はあくまでも補足として、上手にビジネス活用してみてください。
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